2012年1月1日(日) 9:02

21世紀ビジョンで躍進の年に/仲井真弘多知事新春インタビュー

新振計の実現へ/離島の格差是正に力点


離島については定住条件を整備するということが大前提であることを強調した仲井真知事

離島については定住条件を整備するということが大前提であることを強調した仲井真知事

 第4次沖縄振興計画が2011年度で満了することから、昨年までの県政は大きな選択と岐路に立たされていた。舵取り役を担う仲井真弘多知事は、県が策定した「沖縄21世紀ビジョン」で描いた向こう20年間の沖縄のあるべき姿を模索し続けた。仲井真知事は国政与党民主党の掲げる自由度の高い一括交付金を、これまでの沖縄関連予算費と同規模の3000億円で政府に要求。元来、琉球政府の時代から沖縄は、自主的に物事を進めていることに長けていると仲井真知事は踏んでいた。地方分権のモデル地域として沖縄振興を進めたいとする政府意向と、知事要求は見事に合致した。その結果、国が継続して事業を行うべき主な事業を除き、県裁量で事業決定ができる沖縄振興一括交付金(仮称)1574億5600万円が閣議決定された。「知事の粘り勝ちだ」と賞賛する声もある。新振計発進の今年、2010年の県知事選挙で仲井真氏が発した「離島の振興なくして沖縄の発展なし」は実現するのか。新たな年に際し、その政策について聞いた。



-離島・過疎地域の医療について、地域の医師確保の現状を教えてほしい-


 離島地域のユニバーサルサービスをしっかりやろうということから、これまでの沖縄の歴史の積み重ねでである離島医療については、県立病院を維持しながら病院機能の中身を充実させていく考えだ。
 離島を含む東西1000㌔、南北400㌔という広大な海域面積を有する沖縄地域の医療レベルを確保するというのは並大抵のことではなく難しい面もあるが、しっかりと医療行政を行っていきたい。
 医師確保の問題が最重要課題だが、琉球大学医学部と一緒になって、「医師就学資金等貸与事業」などを推進し、現在人が使っているようだが、継続して人材育成に努めていく。
 県内だけでなく日本全体のドクターバンクを活用しながら、いろんなところにお願いをし、足で歩き、さまざまな仕組みをつくりながら、やっていきたいと考えている。離島医療の推進に終わりはない。
 今度の予算についても、離島・過疎地域の医師や医療関係者を確保することは困難を伴うことだが、しっかりやらざるを得ないと思っている。


 -TPPについての県への影響と対応について、具体的な政策を持っているか-


 農業分野での影響があるということで、素早く対応している。沖縄の農業関係者はTPPについて反対だということを農水大臣や官邸にも申し入れた。
 特に沖縄の場合、離島の主力産業ともいえるサトウキビだとか肉牛などの畜産や、一部の水産物をはじめ、影響が広範囲におよぶことことは必至だ。これらを守り抜かないと、サトウキビなどは島々の基幹産業となっているので、強く反対表明している。
 TPPについては仮定、推定などの情報しかなく、非常に分かりにくい。少なくとも最悪の場合を想定しながら対策を頭に描き、自由貿易への対策を講じていかないといけない。現在、必死になって情報収集をしているところだ。


 -知事は一昨年の選挙で離島のユニバーサルサービスの実現を強調しているが、新たな振興計画、振興新法で、どのような形で実現したいと考えているか-


 離島については定住条件を整備するということが大前提。妙な言い方だが、要は未来永劫、人口も減らずに島々に住み続け、産業も発展し、教育もちゃんと沖縄本島と同様に受けられる。そして、島外への移動も比較的自由にできるということを実現させたい。
 島で収穫される産物については、輸送コストも沖縄本島と違いがないようにすることだ。
 医療、福祉も含めて、廃棄物処理だとか通信などの条件整備も、若者がそこにいないと農業などの産業に影響を与えてしまう。
 また、教育も文化芸能を継承していくにせよ若者がいなければならない。
 その定住条件を細かく一つ一つチェックしているが、それらの課題を束ね、解決できるような予算の仕組みをしっかりと作っていきたいと考えている。
 住宅、情報、通信、産業、教育、移動コスト、輸送コスト、医療、福祉、廃棄物処理など、島々なので、縦割りの法律で、すべて対応するのでは間に合わない。施策展開を一挙に行わなければ、なかなか離島の定住条件は整えることができない。ただ、ここまで情報通信が発達していれば、大学でも大学院でも高等教育を受けられる仕組みづくりは可能だ。IT技術などを応用し、徹底したユニバーサルをやらないといけない。


-離島住民のコスト削減について、新たな施策はあるか-


 例えば、高校までしかない島や、中学までしかない島など、それぞれ状況は違うが、移動の費用、中学、高校から親元を離れて出て行かざるを得ないハンディキャップをなくしていく。 産業面でいえば、本土市場に出荷するものについては鹿児島くらいの距離を補てんする輸送コストの補助ができないかということで、削減策を講じる考えだ。
 農産物、畜産の一部では既に行っているが、人の移動にしても島によっては航空運賃の補助を社会実験で行っているので、それを踏まえて、やろうということになっている。
 航空路、海上航路は公共交通システムなので、陸であれば、車か電車が走って当たり前なのだが、移動区間が海上であるがゆえに、そのシステムができあがっていない。
 遅まきながら、どこまで運賃、輸送コストを低減可能かも含めて、やれることは全部やっていきたいと考えている。


-与那国の自衛隊配備については理解を得られていると思うか-


 この問題は今、私が評価したりするのは適切ではないと考える。自衛隊の配備というのは基本的には国の防衛政策なので、担当するところが責任を持って配備の中身、人数、種類、タイミングや規模はやるべきだと思っている。
 これらは防衛省が決めて実行すべきだと思う。ただ、日本が与那国だけではなく、どんな地域においても、地域住民の理解と協力を得なくてはならない。特に防衛については、強力な押しつけは、なかなか反発をするだけで、人々はいろんな考えを持っているので、自衛隊の配備は特殊な分野である以上、技術的、実務的なことについては、防衛省に委ねてもおかしくないと思っている。
 与那国が対象になっているが、その地域の人とは徹底して理解し、協力を求めることを続けることが必要だと思う。今はその過程にあると思う。


-漁業者の安全という観点から尖閣問題については、知事自身どのような考えを持っているか-


 すぐれて議論の余地のない日本固有の領土なので、それと違う意見についてはおかしいと言わざるを得ない。漁船の安全操業を確保するために、海上保安庁を中心に警備をしているが、きちんと海上の安全を守ってもらいたいと思っている。領海侵犯などがあれば徹底して対応を担当する機関がまっとうしてもらいたい。
 国境、領土紛争はないに越したことはないが、現実に起こっている以上、その近海で漁業をしている人が安心して安全に操業できるよう、危険を徹底して排除するようにしてほしい。